月の光は優しくてらす。 9

 

「ひぃぃぃぃ!俺に近寄るなぁぁぁ!」
いい加減に慣れてほしいものだ。五月蠅いったらありゃしない。
「みんなヒロシくんの友達なの?」
「そうだよー!いつも遊んでくれるのー」
ガンガンガン!
「瑠香!」
駆け寄る彼に妹は獣のように叫び、暴れる。
「ひどいわ・・・」
さて、この薬を注射すればいいのだが・・・大人しくさせないとできないな。一番適してるのはあいつなんだが・・・正直、呼びたくない。
「おい!早く瑠香を助けてくれ!」
「いやー・・・そうしたいのは山々なんだけど」
「何か問題があるの?」
「大いにある」
「俺じゃ解決できないか!?俺ができることなら何でも」
「あんたじゃ無理」
ズーンという効果音が聞こえてきそうなくらい落ち込んでしまった。何もそこまで落ち込まなくてもいいだろう。
「仕方ない。呼ぶしかないか」
「呼ぶ?」
「次はどんな人と出会えるのかしら♪」
うぅ・・・嫌だな。仕方ない。仕方ないんだ!
「だ・・・」
「「だ?」」
「・・・()()
ボン!と出てきたのは派手な服を着た男。
「いや~姫に呼ばれたなんて久しぶりだな~!何?また手に負えない事でも起きたのか?けっけっけ!」
「な、なんか腹の立つやつだな」
これだから呼びたくなかったんだ。蛇羅は蛇の妖怪だ。動物は100年以上生きて死ぬと、こいつのように人間に似た姿の妖怪となる。
ちなみに、妖怪を従える事のできる除霊師は御神家だけだ。
「何をお願いしたいんでちゅか~?けっけっけ!」
「そこの暴れてる悪魔を大人しくさせて。以上」
「あれあれ?それが頼む態度かな~?」
「ちょっと!さっきから失礼よ!?
「いいのいいの。ちょっとそこの」
「は!?!?ってかそこのって言うな!」
こそっと耳打ち。
〈お願いします蛇羅様って言え〉
「ふざけんな!何で俺が」
「えーそんなことも出来ないのー?」
「ぎゃぁぁぁ!すんません!蛇羅様おねぎゃ、お願いします!」
「けっけっけ!本当は姫に言ってもらいたかったが・・・まぁお前の怯えた姿に免じて許してやるよ」
ドSだな。
「さーってと。大人しくしな、お譲ちゃん♪けっけっけ!」
蛇の姿になった彼は牢屋の中に入り、グルグルと珀斗の妹に巻きついた。あっという間に動きを封じてしまった。
「さっさとしないと解くかもなぁ♪けっけっけ!」
「はいはい」
鍵を開けて牢屋の中へと入る。
「どっから鍵を・・・」
「さっき成金野郎の懐から取った」
「犯罪じゃねぇか!」
「勝手に入ったし薬盗んだし、今さらでしょ」
「不法侵入に窃盗・・・なかなかやるわね!」
「褒めるとこじゃねぇから!」
ばれなきゃいいんだよ。ばれなきゃ。 ※よい子は真似しないでね☆
「てい」
「おいおいおいおい!丁寧にやれよ!今ブスッっていったぞ!?
「あら、注射ってあんな感じよ?」
「いやいや・・・お前はどんな治療の仕方されてたんだよ・・・」
そうこうしている内に珀斗の妹の爪が縮み、牙は消え、蛇羅に抵抗しなくなった。
「ちゃんと効いたみたいだね」
「さて、俺は遊びにでも行ってくるかな♪けっけっけ!」
「封」
あんな妖怪を野放しにするわけがない。問答無用で封印だ。
「妖怪は紙に封印されるのね。私も紙に封印されるのかしら」
「いや・・・俺達のことはできないんじゃないか?」
「やろうと思えばできるけど」
「すんません、やめてください」
「朔?」
「瑠香!目が覚めたのか!」
どうやら頭がぼーっとしてるみたいだな。
「この人達は?」
「俺達を助けてくれたんだよ!」
「そうなの!?ありがとう!」
「げふっ」
勢いよく抱きつかれた。
「私、変な薬を注射された後から記憶がなくて」
暴走してた時の記憶はないのか。その方がいいかもしれない。記憶があっても辛いだけだろう。
「さて、帰るか」
「そんな!もっと再会した喜びを」
「はい、撤収」
さっさと帰って寝たい。
 
「朔!瑠香!」
「兄貴!」
「お兄ちゃん!」
「初めまして」
「え?誰?」
「捕まってたからついで」
「私、立派な天使になるわ!」
「お、おぉ・・・頑張れ」
「そこの双子。心配する人がいるんだから行動は慎重に。天使、あんたははしゃぎ過ぎないように。じゃ、お疲れ」
あぁ疲れた。こんな事はこんりんざいしたくないな。
「待ってくれ!俺、お前について行く!いや、ぜひともついて行かせてください!」
「私も!恩返しがしたい!」
「あなたの役に立ちたいわ!」
「姫依!俺もまだ恩を返しきれてない!今回のことでまた恩ができたし。連れて行ってくれ!」
「いや、そういうのいいから」
 

こうして面倒なやつらが付きまとうようになった。

 

                              第一章 おわり