「瑛、疲れてないか?」
「問題、ない」
瑛と京の二人は右の道を行く事にした。様々な花が咲いていて瑛は満足そうだ。
「実は、道が、繋がったり、してな」
「あぁ~、漫画とかでよくあるよな。そういえば瑛は漫画とか読むのか?」
「それなりに」
いつも瑛を気遣っている彼だが、瑛が何を好きだとかはよく知らない。他の二人も同じだ。瑛の事はみんなよく知らないのだ。彼女は六年前、突然春風学園にやって来た。春風学園に来て彼女が初めて会ったのは京だった。「そこの、寂しがり、少年。責任者、連れて、来い」「誰だ?お前」これが二人の初めての会話だった。瑛の迫力に負けた京は言われたとおり理事長を連れて行ったのだが、京には彼女が「泊まらせろ」と言っただけで理事長は何も言わず、寮に連れて行ったように見えた。なぜ彼女が突然春風学園に来たのかは理事長と瑛しか知らないらしい。二人ともなぜか聞いてもはぐらかす。
「どんなジャンルが好きなんだ?」
「ファンタジー、とか。京は?」
「俺は冒険ものだな」
「京、らしいな」
クスッと彼女が笑うので京は照れた。彼女の笑顔に京は弱いのだ。
「あっちは、どうだろうな」
「大丈夫だろ」
*
「毒キノコ採るのやめない?」
「やだー」
左の道を選んだ塊と嵐の二人は毒キノコの採集に励んでいた。こちらには花よりもキノコの方がたくさんあるようだ。嵐は正直、塊と左の道を選んだ事を後悔していた。理由の一つは左の道がキノコばっかりでつまらない事。もう一つは塊がまともな話し相手にならない事。瑛でも京でもまともな話し相手にはならなかっただろうが。別に塊が嫌いなわけではない。塊は良き理解者であり、兄妹だ。性格は全く違うが仲は良い。一つだけ不満を言うとしたら、苦手な爬虫類や両生類を近づけてくる事だ。
「この道の先には何があるんだろうね」
「さぁー?」
「気にならないの?」
「なるけどー、考えるよりも先に進む方が先決ー」
嵐は立って先ほどから気になっていた事を聞いた。
「あのさ、一つ聞いていい?」
「なにー?」
「この毒キノコ、持って帰ってどうすんの?」
毒キノコをせっせと採っていた塊がゆっくり振り向いた。
「食べさせるんだよー・・・」
「だ、誰に?」
「それはねー・・・」
くっくっくっと彼は笑った。嵐は一歩後ずさりした。
「きゃっ!」
後ずさりしたとたん、塊の視界から嵐が消えた。
「いたたたたた。なに?落とし穴?」
「わーい、引っかかったー」
けたけたと塊が笑う。嵐は見事に彼が作った落とし穴にはまったのだ。先ほどのは嵐を後ずさりさせるための芝居だったのだ。
「落とし穴なんて、いつの間に作ったのよ・・・」
「嵐が毒キノコ採ってる時ー」
彼女が毒キノコを採っていたのは一分ほどだ。一分で彼女がすっぽりと入るほどの落とし穴を普通作れるとは思えない。だが、あくまでも普通ならばだ。塊は百メートルを五秒で走るほど運動神経がずば抜けている。彼なら・・・あり得る話だ。
「・・・そう」
塊が悲しそうに穴の中を覗き込んできた。
「ごめんねー。痛かったー?傷付いたー?・・・僕の事、嫌いになったー?」
「ううん。そんな事ないよ」
塊の顔がパァッと明るくなった。
「そっかー。良かったー」
塊から救出してもらって再び歩き出した。
「あ、なんか開けてきたね」
「ほんとだー」
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