瑛達は聞き込みを開始することにした。春風学園の生徒はみんな噂好きだ。そういえば、秋吉は十五年前の中等部卒業生だ。そんなわけで、秋吉に聞き込みをする事にした。
「ハーッハハハハハ!なんでも知っていて歩く辞書とよばれているこの!この私に何か用かね!」
「うるさい」
「そこの君!いつもいつも何なんだね!」
「あぁ!?瑛の事を悪く言いやがったな!」
「ほ、本田くん・・・といったかね?暴力はいけないと思うぞ、君!」
「うるせぇ!売られた喧嘩は買ってやりゅっ、買ってやる!」
「ぷっ!噛んでやんの!」
大事なとこで噛んでしまった彼を笑った嵐。反撃されると思ったら彼の反応は意外だった。
「・・・くっ!」
そうやら背を向けて泣いているようだ。噛んだ事が悔しかったのではない。噛んで瑛に恥ずかしいところを見られたことがショックだったのだ。
常に瑛の味方で瑛にはかっこよく見てもらえるように頑張っていた京。こんなところで失敗するとは。感情の矛先は秋吉へ。
「お前は意味が分かんねぇー!」
「私は何もしてないぞ!?」
「京」
秋吉にプロレス技をかけようとしていた京が止まった。
「噛んだ、可愛い」
嬉しいような悲しいような。女の子に可愛いと言われて喜ぶ男の子は少ない。彼はとりあえず瑛が笑ってくれたので良しとした。
「君達が私に逆らわないと誓うなら話してやってもいいぞ!」
「帰るか」
「そうだね」
「無駄、だった」
「無駄無駄ー」
ポツンと仁王立ちのまま廊下に残された秋吉はうっすら涙を浮かべていた。
*
「ここが寮だよー」
「知ってるわよ。この寮で生活してたし」
どうやら調べていくうちに少しだけ記憶が戻ったらしい。
光が懐かしがっていると、すっと五人の前を白い物が通った。幽霊である彼女さえ幽霊かと思った白い物体の正体は寮長だった。
「寮長、どうした」
「あら~。今日も仲が良いみたいね?」
「そ、そうか?」
「なに照れてんの」
「実はね?ツチノコを見かけたって聞いて探しに来たのよ~?」
「ガセネタ、だろ」
「どうして?」
「こんなとこにツチノコはいねぇだろ」
「というか寮長、まだツチノコ探してたんだ・・・」
「ツチノコはロマンよ~?」
「ロマンー」
二人で「ロマン~♪ロンロン♪」と歌い出してしまった。そんな能天気な二人をぼーっと見ていた光の頭に何かがよぎった。
「あ・・・」
「どうしたの?」
「今、何か思い出しかけたんだけど・・・あれ?」
寮長に会った事で思い出しかけたのではないかと思った瑛達は「ツチノコって枕に最適なのよ?」などとツチノコについて語り出した寮長を瑛の部屋に連れて行き、光という人を知らないかと聞いた。
「光さん?そうね~?あぁ、そういえば私の叔母さんが光って名前だったような?」
「叔母さんですか?」
「そうよ?もう亡くなってしまったけれど・・・」
もしかしたらもしかするかもしれない。寮長の叔母さんの名前が光。ここにいるのも光。
「どうして亡くなったのー?」
「えーっと・・・自殺じゃなかったかしら?」
「何年前、話だ」
寮長は首をかしげて、苦笑いで答えた。
「さぁ?そこまでは知らないわねぇ?前にお母さんに聞いたけれど、その話になると話題を変えるのよねぇ?」
「誰か他に詳しい人はいないのか?」
「お母さん以外だと・・・おばあさんかしらね?」
寮母は午後から出張に行った。おばあさんからはもう話を聞いた。瑛達はもう一人光について知っていそうな人物を知っているが・・・。
「他にはー?」
「あとは・・・あぁ、秋吉先生も知っているはずよ?」
やっぱり知っているのか・・・。
「ところで、どうして叔母さんの事を調べているの?」
「そ、それは・・・」
「ツチノコ、探す、必要」
「そうなの?じゃあ協力しなきゃね?」
ナイスフォローだが、なぜそこまでツチノコの枕が欲しいのか・・・。寮長の謎は深まるばかりだ。
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