メロディー♪ ~春風学園の七不思議~ 8

 

「お姉ちゃんは私が死んだ当時、大学に行ってたの。遠ーーーーーい所に!だから、ぜんっぜん会えなくて!携帯は禁止だったし、普通の電話はあっちが忙しくていつも留守。帰ってくるのは四年に一回の正月だけ。オリンピックかよ!って感じだよねー。バイトかなりしてたからしょうがないんだけどさ。そんな感じですごく会いたかったわけ。お姉ちゃんは頭良いし、顔は良いし、スタイルも抜群だし、手先も器用だし、もちろん性格も金メダル級!さっきのオリンピックとかけたんだけど分かった?」
「いや・・・」
「なに~?京くん暗いなー!暗くなってると人生損するぞ!って私が言っても説得力ないってか?」
「・・・」
「そこは笑えよ~!で、お姉ちゃんの事なんだけど、当然のことながらモテるわけ!ラブレターの数すごかったよー!大学行ってて実家にいないのに、実家に届いたりして!あの人達お金無駄にしてたよねー。でさ」
「ストップ!」
いつまでたっても止まらない彼女の姉自慢に嵐がストップをかけた。
「長い!寮に着くまで話し続けるつもり!?」
光の姉は寮母だということが判明した。寮母はもう帰ってきているはずなので、会うためにさくらんぼ寮まで光も一緒に帰ることにしたのだが、彼女の姉自慢が長い長い。姉の事が大好きなのは十分伝わった。伝わったのだが、あまりにも同じ事を聞かされたのでさすがに瑛達は疲れていた。
「まぁ、良いじゃない!話せるのも・・・もう、最後なんだからさ」
姉に会いたかった事が成仏できなかった理由なのだから、寮母と会えば光は成仏してしまう。世間的に見れば良い事なのかもしれない。だが、瑛達にとっては辛い別れなのだ。
そんなこんなしていたら、さくらんぼ寮が見えてきた。
          *
瑛達はリビングにいた。寮母にはまず、この場に幽霊がいて、それが光だという事を説明した。説明すると「・・・そう」とたいして驚きもせずに受け止めた。
「また会えそうな気はしていたの。光、あなたが死んだとい聞いた時はとても悲しかったわ。相談相手になってあげれなかった事、ごめんなさいね」
「違う!お姉ちゃんは私の事を大事にしてくれた!私が臆病だっただけなの。・・・お姉ちゃん、ありがとう」
とたんに彼女の体が透けだした。足からどんどん消えていっている。
「あぁ、もう消えちゃうんだ。なんかあっけないなぁ。でも・・・すっきりした!友達もできたし!四人とも!私の分まで友達作ってよね!そうだな・・・最低一万人!」
下半身は消えてしまった。笑顔の彼女の目に涙が浮かぶ。
「光!」
「嵐、あんたとはぶつかってばっかだったけど、楽しかった!」
「光・・・やだ・・・」
「泣くなって!泣き顔似合わないよ!笑いなって!笑った方がまだましな顔なんだから!」
肩まで消えてしまった。もう完全に消えるまでの時間はわずか。
「みんな協力してくれてありがとう!笑顔で幸せになってね!なんてったって私の大切な友達なんだから!」
彼女は完全に消えてしまった。瑛達に笑顔を残して。
          *
学園の七不思議は相変わらず話題になっている。
「ねぇねぇ知ってる?満月の夜に屋上に行くと幽霊が現れるんだって!」
「あぁ、知ってる!だってそれ、私の友達だもん!」

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