月の光は優しくてらす。 5

 

「死にさらせーーーー!」
「「えぇぇぇぇぇぇ!?」」
氷から出てきて早々、彼女は思いっきり大蛇の尻尾を殴った。
いきなり物騒な発言をしたとか、いきなり殴ったとか、イメージと違いすぎたとか、彼女の状態とか色々なことに2人そろって驚いた。
「まったくもう!人を傷つけて!人・・・人と悪魔を傷つけて!」
プンプンと大蛇に説教をしている。意外と大物だな、彼女。
「大丈夫?今すぐ治療するわ。・・・あ、あれ?」
倒れた私を掴もうとするが掴めない。
「あなた死んでるから掴めないよ」
「またまたぁ、そんな冗談を」
「さて問題です。あれは何でしょう」
彼女が振り返るとうつ伏せの彼女が。正確にはうつ伏せの彼女の死体が。
「ご愁傷さま」
「わ・・・私、死んだ・・・の?」
こちらから表情は見えないがショックを受けているのだろう。まぁ、そうだろうな。
「落ち込むなよ。あんたなら神様が天国へ」
「自由だーーーー!」
「「えぇぇぇぇぇぇ!?」」
「私、ずっと動けなくて辛かったの!」
「ま、まぁ・・・凍ってたしな・・・」
「その前から!病気で部屋から出れなくて」
「あぁ、確か成金野郎がそんな事を言ってた気がする」
「な、成金野郎ってお前・・・」
「そう!あの成金野郎!私を氷漬けにして商売するなんて!許せない!」
「えぇぇぇぇ・・・。俺の中のイメージがどんどん崩壊していく・・・」
「でも、そのお陰であなた達を助けることができるわ。さぁ、あの水を飲んで!」
・・・・・・・・・・・・・。
「あのさ、怪我で動けないからこんな状態になってるんだけど」
動けてたらさっさと飲んでいる。
「あっ・・・そっか・・・」
シュンと落ち込んでしまった。黙っていれば天使のようなんだけどな。黙っていれば。
「ほっほっほっ面白いのぅ!おぬし気に入った!天使にしてやろう!ほいっとな!」
どこからか声が聞こえたかと思うと、空から光が彼女(霊の方)に降り注いだ。
光が消え、そこには翼の生えた彼女が立っていた。白い翼がよく似合う。
「うわぁぁ!ホントに天使になった!やっほーーーい!」
黙ってれば・・・なぁ。
「天使にしたってことは・・・今の声って神様か!?
「呼んだかの?」
「どわぁぁ!」 
「神様。そんな事ができるなら私たちを助け」
「ほっほっほっほっ!じゃあの~」
・・・逃げた。
「んだよ、ケチだな」
「神様ありがとうございます!」
「なんのなんの」
「うわっ!まだ居たのかよ!」
「ほっほっほっ!頑張るんじゃぞ~」
「はいはい」
「あと、わしはケチではない!」
「すんませんでした!」
土下座・・・。怪我して動けないとか言ってたのに。火事場の馬鹿力とはこのことか。なるほど。
「じゃあ、水運んで来るわね」
キラキラとした笑顔で言われた。
テクテクテクテクテクテク・・・バタリ。
「「えぇぇぇぇぇぇ!?」」
まさかの途中リタイア。6歩しか進んでないんだけど。
「私の命も・・・ここまで・・・か・・・」
「あんたもう死んでるから」
使えないやつばっかりだ。今は私も使え・・・いや、私は違う。断じて違う。
「しょうがねぇなぁ。俺がひと肌脱ぐか」
と言ったかと思うと普通に歩きだした。ちょっと待て。
「へぶっ!おっ、おまっおまっ、お前!足ひっかけんじゃねぇよ!」
「なんで普通に歩いてんの?」
「それはあれだ。俺は悪魔だからな。しかも回復能力は悪魔の中でもピカイチ!」
それならそうと早く言ってほしいもんだ。
「いっいてっ、いててててて!足から手を離せってててててて!いてぇぇぇ!」

 

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