メロディー♪ ~春風学園の遠足~ 1

 

前略  明華(めいか)
こっち、生活、快適だ。おもしろ、友達、三人。食べ物、いまいち。海は、きれい。でも、山、見たいな。そっちは?連絡、欲しい。明日、遠足ある。海、行くぞ。去年と、同じだ。平和の、証拠。
「ぎゃあああああーーーーー!」
追伸 友達、うるさいの、二人。
*     *
とある学生寮で一ヶ月に一度書く手紙を書き終えた三つ編みの女の子はため息をついた。
「長文、疲れる」
「来るなーーーー!」
未だに叫び続ける友達に彼女は呆れたようにこう言った。
「何事だ」
(あきら)!こいつが蛇持ってるーーーー!」
「おもちゃだってばー」
「だから近づけないでーーー!」
顔がそっくりなこの双子。蛇のおもちゃを持って追いかけてるのが『中村(なかむら) (かい)』(兄)。逃げ回ってるのが『中村(なかむら) (らん)』(妹)である二人とも本当に顔が瓜二つで見分けがつかない。身長も百六十センチで同じだ。見分けをつけるのは性格と声しかない。塊は運動神経が抜群だが、のんびり屋。嵐はしっかり者だが、よく叫ぶ。
「嵐。それ、おもちゃ。怖い、ないぞ」
そして先ほど手紙を書いていた百五十センチほどの女の子は『吉田(よしだ) (あきら)』だ。彼女の独特な話し方はしゃべるのがめんどくさいと言って、言葉を覚える事を十歳までしなかったからだ。外国に行っていたというような格好の良い理由ではない。このメンバーにいつもはもう一人男子がいるのだが、今はいないらしい。ちなみに、四人とも十六歳だ。
「早くそれを始末して!」
「そんなドスがきいた声で言わなくてもー」
双子のやり取りに飽きたのか瑛は席を立った。それに気づいた塊が声をかけた。
「どこ行くのー?」
「明日、遠足、準備する」
          *
「ねぇ。去年も言ったよね」
「むー」
「お菓子はほどほどにー」
遠足出発前。双子に説教される瑛はふてくされていた。去年もその前もその前もその前も・・・とにかく瑛がこの『春風(はるかぜ)学園(がくえん)』に来てからの遠足はいつもこうだ。お菓子の金額が決まっていても守らない。正確に言うと守れない。
「最初、金額内、だった。だんだん、欲しいもの、増えた」
「だからって買っちゃダメでしょ!」
「そうだよー」
ぷーっと膨れている瑛に男子が近づいてきた。目つきが悪く、黒い前髪が目にかかっている。瑛よりも三十センチも背が高い。
「別にいいだろ。瑛の好きにさせろよ。荷物は俺が持つ」
見た目からは想像がつかない様な優しい言葉をかけたのはメンバーの最後の一人、『本田(ほんだ) (きょう)』。こちらのセリフも去年と同じだ。
「京は優しすぎるんだよー」
「瑛だけにだけどね」
「京、悪いな」
「いつでも頼れよ」

にこやかに笑う京。つられて瑛も笑う。しかし彼らは知らない。普段笑わない彼が笑っている事に周りの教師や生徒が不気味に思っている事を・・・。

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