メロディー♪ ~春風学園の遠足~ 2

 

「あのさ。遠足って海だったよね」
「そうだったねー」
「ここはどこ?」
「山、にしか、見えないな」
「だな」
「なんで山ーーーーー!?」
海に行くはずだったのに、なぜか山に来ていた。驚いていたのはこの四人だけではない。遠足に参加した春風学園の教師・生徒全員が目の前の景色に唖然としていた。
「願い、叶った」
「良かったな瑛」
「良くないでしょ!」
突然の事態に喜んでいるのは瑛と京だけだった。もっとも、京の場合は瑛が喜んでいるからなのだが。
「アッハハハハハハ!みんな困っているようだね!」
その場の雰囲気にあまりにも不釣り合いな声が響いた。赤いスーツに赤い靴。おまけに赤いリュックサックをしょっているスキンヘッドの男。この男は『秋吉(あきよし) (せい)』という春風学園の紛れもない教師である。いつもやる気だけはあるのだが、自分の考えを強要しすぎる部分がある。生徒みんながどう思っているかは分からないが、少なくとも瑛達は苦手だった。
「秋吉、うるさいぞ」
「先生と呼ばないか!瑛くん!」
「怒鳴らなくても・・・」
「耳がーあわわわわー」
「一発殴ってやる・・・」
「京、待って」
もはや、しゃべっているのはこの五人だけだった。周りの教師や生徒は次の展開を待っている。
「何か、知ってる、しゃべろ」
「何が言いたいのか私には分からないね!ちゃんと言葉にしたまえ言葉に!」
「むー・・・」
「んだとてめぇ!瑛を侮辱するのは許さねぇ!侮辱するならこの二人にしろ!」
「こら!」
「ひと言よけいー」
二人が反論すると、京は黙った。周りがホッとした瞬間、京は百獣の王といわれるライオンでも腰を抜かしそうなほど恐ろしい眼で睨んだ。固まる者、その場で腰を抜かす者、おびえて逃げ出す者、悲鳴をあげる者、京が睨むことで空気が凍ってしまった。凍りを溶かしたのは瑛だった。
「秋吉、お前は、何か、知ってる。言え」
「だから何が言いたいんだ!」
「なんか知ってんなら言えって言ってんだよ!」
周りの者が「そうだそうだ!」と言い出した。怯えながらだが。
「そ、そうか!お、教えてやろうではないか!なぜ君達がここにいるかというとだな・・・」
そこら中で生唾を飲む音が響いた。そんな中、瑛だけ無表情で聞いている。
「私が道を間違えたからだ!」
彼は方向音痴だった。当然の事ながら彼は全員から非難をあびた。それを止めたのはまたしても瑛だった。
「やめろ」
「でもね、瑛。私達は海に行くはずだったんだよ?」
「期待を裏切ったのは秋吉のせいー」
「みんな、話、聞く」
全員が瑛の言葉に耳を傾けた。秋吉も含めて、だ。
「ここ、海、違う。山」
「そんなこと見れば分かるよ。吉田、早く言えよ!」
「黙ってろ!」
「・・・な、何だよ、本田が怒るなよ・・・シクシク」
「山、楽しい。いっそ、遊ぶ。遠足、エンジョイ!」
「吉田が楽しみたいだけだろ」
京が男子生徒に近づき「余計な事を言うとどうなるか分かってるな」とむなぐらを掴みながら脅した。今回の一番の被害者は彼かもしれない。
「じゃあ、行きますか」
「京ー、置いて行くよー」
「エンジョイ」

張り切って森へと入って行く瑛。慌てて大量の荷物を持ってそれに付いて行く京。「あ、毒々しいキノコ発見ー」と言いながらものすごいスピードで走りだす塊。やれやれとでもいうように歩き出す嵐。二分ほどして我に返った春風学園の教師・生徒は彼女達を追いかけるように森へと足を運んだ。

 

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