メロディー♪ ~春風学園の七不思議~ 1

 

前略 瑛
遠足はどうだった?山は緑がすごく綺麗だよ。私は海が見たいなぁ。そうそう、あの人達がまた瑛の家に来てたよ。いないのにね(笑)。
最近、こっちでは怪談話が流行ってるよ。私は苦手だからあんまり聞かないけど、瑛は好きだったよね?怪談話自体よりもそれを調査するのが(笑)。春風学園にもあるんじゃないかな。あ、あったとしても別に知らせなくていいからね!         草々
          *
七不思議。今、春風学園で噂になっている事である。それに興味津々な女の子がここに一人。
「七不思議、知ってる?」
今日も三つ編みの瑛が放課後の教室にたむろっていた三人に聞いた。怪談話を聞くとすぐに正体を暴きたくなってしまう彼女は、春風学園に七不思議があると知って興味を持ったようだ。まだ、七不思議があるとしか聞いていないようだが。
「七不思議?そんなもんがあるのか」
「京は知らないでしょうよ」
「んだと!?」
京が嵐のむなぐらを掴む。そこに塊が割って入った。
「馬鹿にしてるわけじゃないよー。京はー、人付き合いをあんまりしないからー、噂とか知らないだろうって事ー」
それを聞いた京は嵐を離した。
「七不思議」
「謝ってよ」
「はぁ!?お前の言い方が悪かったんだろ!」
「七不思議・・・」
彼女の声は二人に聞こえていないようだ。瞳がうるうるしてきた彼女に塊がのんびり話しかけてきた。
「もうちょっと待てば終わるよー。知ってるー?ああいうのってー、喧嘩するほど仲が良いって言うんだよー」
その言葉を聞いた彼女は首をかしげた。
「喧嘩をする、良い、のか?」
「喧嘩をするって事はー、それだけ言い合えるって事でー」
「七不思議ってヤツを俺にも教えてくれ」
説明が終わらない内に喧嘩の方が終わったようだ。話は七不思議に戻った。
「七不思議ってのは、ようするに七つ不思議な事があるってわけ」
「それは、知ってる」
「ってか、まんまじゃねぇか」
ムッとしながら嵐は続ける。
「で、私達の学園にも七不思議があって、今みんなの話題になってんの」
「ほとんど寮長の事らしいよー」
「例えば、どんな、ある?」
瞳をキラキラさせながら瑛が聞いてくる。その隣で京の瞳も若干キラキラしている。こういう話が結構好きなようだ。
「一番有名なのは、さくらんぼ寮で夜な夜な数え歌が聞こえてくるっていうやつかな」
「一枚―、二枚―、三枚―・・・どうしようー、一枚足りないー」
彼が言うと全く怖くない。
「俺達の寮でか?」
「そうそう。怖い~?」
いたずらっぽく言う彼女に無表情で京が返答。
「別に。ってか知ってるしな」
「知ってる、のか?」
「でも、いっつも言ってるわけじゃない。たまにだ。夜中だから瑛は知らないだろうな」
瑛は九時には寝る今時珍しい子供である。テレビはそんなに興味ないし、宿題はすぐ終わるし、特に趣味もないからこそできる事だ。
京がなぜ夜中起きているのかというと、瑛がちゃんと寝ているかドア越しに確認するためと、学園の警備のバイトをしているからだ。どっちかというと前者が主な目的だ。
「どうせ寮長だろ?」
「正解」
「宿題のプリントをよくなくすんだってー」
「寮長、ぼーっとしてるからね」
しみじみと寮長に想いをはせる。
「他には、ない?面白いの」
「夜のプールで泳ぐ音がするとか」
「怖い怖いー」
「それも寮長だろ」
寮長は現在、子犬を飼っているらしく、水遊びをさせるために学園のプールで泳がせているのだそうだ。(冬限定)。
ちなみに、七不思議の中には『冬のプールには髪の毛が浮いている』というものがある。実はその髪の毛は寮長の飼い犬の毛なのだ。学園からしたら迷惑な話なのだが、当の寮長は自分のせいだとは気付いていないらしい。
「あとは、忘れ物を取りに来た生徒が血だらけの人が立ってるのを見たとか・・・」
「それは、怖い」
ふっふっふーと嵐は得意そうに笑っている。血・・・赤、赤・・・あなたは誰かの事を思い出さないだろうか?瑛達は思い出した。赤といえば――
「秋吉じゃないのか?」
「やっぱそう思う?」
「赤といったらねー」
「何を、してた?」
教師である秋吉は週ごとに代わる校内の見回りをしていた。その時ちょうど忘れ物を取りに来た生徒がいた。月が昇りかけていた時間帯だ。顔がよく見えない。おまけに秋吉はいつもの真っ赤な服装。そして運の悪い事に、その生徒は秋吉の事をよく知らなかった。ゆえに、赤=秋吉という発想ができず、赤=血と思ってしまったのだ。
「正体が、分かって、ない、のは?」
調べる事が目的で聞いたのに、今まで聞いた七不思議は正体が分かっている。
「正体が分かってないの?ん~・・・」
「あるよー」
「あるなら早く言えよ!」
「あわわわー。えっとー、満月の夜に屋上に行くと幽霊がいるらしいよー。名づけてー、満月幽霊ー」

今日は満月だと新聞に書いてあった。なんと都合のいい。ともかく、たまたま満月だったのでさっそく調べてみる事にした。

 

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