メロディー♪ ~春風学園の七不思議~ 5

 

気は進まなかったが再度秋吉に話を聞くことにした。
「ようやく分かったようだな!さぁ!誓ってもらおう!」
一応廊下に行ってみたら、彼はまだ仁王立ちで固まっていた。まるで飼い犬に『まて』をしたように。
「ふざけんな!さっさと吐け!くそっ!縄が邪魔だ!」
彼は椅子に縛りつけれられていた。すぐに手を出すので瑛がじっとしてろと言って縛りつけたのだ。瑛にさえ言われていなければ縄なんてすぐに引きちぎるのに。
「吉田~。俺、用事あんだけど・・・」
「瑛に言われてなかったらこんなもん!」
「いてっ!蹴るなよ本田~。・・・シクシク」
足をさすりつつ京の見張りをする男子生徒。彼はたまたま通りかかっただけなのに、また巻き込まれた。そういう運命なのかも知れない。
「ふっ!いい気味だな!」
「あぁ!?」
「・・・ごほん。さぁ!誓いたまえ!」
「断る」
まるで星のようにキラキラと輝きながら、右手を斜めに上げてまで気持ちよさそうに言った彼に瑛がズバッと否定の言葉を刺した。
「・・・ふっ、ふっ、ふっははははは!」
「とうとう壊れたよ」
「壊れた壊れたー」
「俺の手でできなかった事が悔しい・・・」
「どうでもいいから帰らせて~」
夕暮れの校舎に響く笑い声。赤い服のスキンヘッド。不気味だ。実に不気味だ。七不思議になるのもうなずける。
冗談は置いといて。
「私は壊れてなどいない!君!いい度胸をしているな!気に入った!」
彼は瑛に握手を求めてきた。その手を取る瑛。
――友情が芽生えた瞬間――
と、上手くはいかないもので。握手はしたものの、正直、瑛は彼に友情の欠片も芽生えなかった。それとは反対に彼は瑛を認めたらしい。光の情報を知っているだけくれるのだそうだ。
「光、寮長、伯母?」
「その通りだ!」
「なぁ、一件落着したんだろ?そろそろ帰っても」
「まだ、ダメ」
「光はどうして死んだの?」
「君は認めていないが・・・まぁ、いいだろう!おまけだ!」
「うわ、むかつく」
「何か言ったかね!」
「なんでもありませーん」
「光くんは自殺だ!」
聞いといてなんだが、大きな声で自殺と言うのはよろしくない。
「そうじゃなくてー、理由ー」
「本人に聞いたらどうだ!おっと・・・聞けないのだったな!私の推測でいいなら話すぞ!」
「早く言えよ」
「吉田~?俺、そろそろ~」
「まだ、ダメ」
「・・・友達がいなかったからではないのかと思っている!」
友達がいない辛さ。それは人それぞれ感じ方が違うだろうが、もっとも孤独に近い事だろう。友達が全てとは言わない。だが、いるのといないのでは大きく違うのだ。瑛達もその事はよく知っていた。
「なるほど、そうか」
「なんかー、しんみりー」
「そうだね・・・」
「・・・・」
「吉田~?」
「まだ、ダメ」
「・・・シクシク」
雰囲気が暗くなってしまった。
「まぁ、友達がいないのなら作ればいいのだがな!」
この男と孤独は無縁のようだ。 

                                                             次へ